「とにかく可愛すぎるんだ。何をしてても可愛い。存在が可愛い。そんな子が今もどこかで無防備に歩いてると思ったら気が気じゃなくて、本当は今すぐすっ飛んで会いに行きたいぐらいで――」
「す、翠さん」
「ん?」
「もう大丈夫っす」

 なぜか橙が赤面して恥ずかしそうにしている。

「翠さん、よく真顔でそんなこと言えますね……」
「え?」

 そんなこと?なにか変なこと言っただろうか。

「とにかく、翠さんがどれだけいちかさんを好きかは伝わりました。このことみんなには言わない方向でいいんすけど、なんかあったときのために自分だけでもどんな方か知っておきたいっす。写真とかありますか?」
「あー……その辺はまぁ、おいおい」
「おいおい?」
「おいおい」

 テキトーに笑ってごまかすと、橙はちょっと不服そうに眉をしかめながらも「うす」と引き下がってドアに向かった。
 この後一部のメンバーと街の見回りをすると言っていたから、それに向かうのだろう。

「……〝おいおい〟、教えてくださいね」
「う、うん。おいおい、ね」

 橙はやっぱり眉をしかめながら、総長室から出て行った。