初めて苺花を見たのは、図書館一階の貸出フロアだった。
 苺花は杖をついたおばあさんのために梯子に登り、棚の一番高いところにある本に一生懸命手を伸ばしているところで。その手が、あまりにも震えていて心配になった。
 今だからわかるけど、苺花は高いところが苦手。おばあさんのために相当頑張ってたんだと思う。
 通りがかり僕は体の小さな彼女にハラハラして、代わりに取ってあげようかとも思ったけど、自分から女の子に関わることは気が引けて行けなかった。
 ようやく目当ての本を手にした苺花は、満面の笑みでおばあさんに本を渡した。その笑顔がすっごく無垢で、綺麗で、可愛くて。僕は初めて女の子に興味が湧いた。
 その数日後、自習室に現れた苺花に、心の中でガッツポーズをした。
 僕にチラチラ見られてることにも気づかない苺花は、窓際の席でノートを開き、難しそうに眉間を寄せてみたり、嬉しそうに顔をほころばせてみたり。
 話さなくても、彼女の考えてることが手に取るようにわかった。
 その全部が可愛くて、ずっと見ていたくなった。
 同時に、可憐な彼女を男が放っておくわけないって、焦りもした。
 そんな彼女に恋をしてるって気付くのに、そう時間はかからなかった――。


「守ってあげたいって思った女の子、初めてだったんだ。目にするだけでドキドキするのも、可愛すぎて顔が熱くなるのも、僕のこと好きになってくれたらいいのにって思ったのも苺花が初めてだった」

 この子を、この世の色んなものから守りたいって思った。
 できれば、彼女のすぐそばで。