「彼女、恥ずかしがり屋なんだよ。悪いけど黙っててくれる?」
「しかし……」
「それに僕も、可愛い彼女を晒し者にしたくない」

 本音をさらっと盛り込むと、橙が目を丸くした。

「翠さん……いちかさんのこと本当に好きなんすね」
「?うん」
「『女子は苦手』って言ってたのに、どうしていちかさんは大丈夫なんすか」
「んー……」

 苺花以外の女子は、今でも苦手だ。
 自分で言うのもなんだけど、僕は女の子に好かれやすい見た目をしているようで、昔からよく女の子が近寄って来た。
 僕を取り合って喧嘩する女の子たちを見た回数は数知れず。
 僕のせいで怒ったり泣いたりする女の子たちを見て、必然的に避けるようになった。
 だからこそわざわざ少し遠い男子校に通っているわけだし、通学中に声をかけられるのが苦痛だから本を熟読するようにしているぐらいで。
 そんな僕が生まれて初めて一目ぼれしたのが、苺花だ。