「〝翠くん〟って呼ばせてるんすか」
「うーんと……」

 言い逃れできない状況。
 彼女ができたと、白状するしかなさそうだ。
 相手は橙だし、藤堂の妹だってことさえ伏せておけば大事にはならない、か?
 まさか〝いちか〟がこないだ新入りがさらってきた藤堂苺花だなんて、夢にも思わないだろうし。

「……うん。彼女だよ。この春から付き合ってる」
「やっぱり……!」

 言うや否や、橙が頭を抱えた。

「龍乱會の姫じゃないっすか!!」
「あ、いや、」
「明日、いえ、今日にでも緊急集会しましょう!〝いちか〟さんをみんなに紹介しないと!」
「いや、いい。しなくていい」
「なんでっすか!龍乱會の姫の座を狙って翠さんに近付こうとする女がうじゃうじゃいるんすよ!?」

 本来、総長の彼女は姫と呼ばれてチーム総出で崇め守る仕組みで、その姫の座は女子的にかなりのステータスになるらしい。よく知らないけど。
 だから僕と仲良くなりたいらしい子がよく龍乱會に来るのだけど、これまでは女子が苦手な僕のために橙がテキトーにかわしてくれていた。

「ただでさえ翠さんモテるのに、捌くの大変なんすよ!いちかさんが総長の姫だって大々的に発表して龍乱総出で守るべきです!」
「それは、まぁ、そうなんだけど……」

 それができたらどんなにいいことか……。