確かに、真面目な人だと思ってた翠くんが暴走族チームの総長で、それも一つのチームを潰しちゃうぐらい強い人だったなんて……
 その上大好きなお兄ちゃんたちの、敵。
 ショックじゃないって言ったら嘘になる。
 ……でも。

「んーん。私は翠くん自身を好きになったんだよ。たとえ翠くんの正体がお兄ちゃんの敵でも、嫌いになんてなれないよ」

 私が迷いなく言うと、翠くんはホッと息をついた。

《よかった》

 むしろ総長姿の翠くんカッコ良すぎて好きな気持ちが増しちゃった、なんて言ったら、翠くんどう思うんだろう。

《僕も、苺花が誰の妹でも苺花を愛する気持ちは変わらないよ》
「翠くん……」

 改めて翠くんの深い愛を感じて嬉しくなると同時に、明志くんに言われたことを思い出して気持ちが暗くなる。

「あのね、お兄ちゃんが私に護衛つけるって言ってて……図書館行くと会っちゃうから、しばらく行けない、かも」

 ちゃんと口にしてみたら、翠くんに簡単に会えなくなるって事実を突きつけられて、さらに気持ちが暗くなった。

《そっか…》

 翠くんの少し落胆した声に、ぐっと胸が締め付けられる。

《正直寂しいけど……苺花のお兄さんの判断は正しいと思う。僕、図書館行くの控えるよ。苺花、家だと勉強集中できないって言ってたでしょ?》
「でも、それは翠くんもでしょう?」
《僕は大丈夫だから気にしないで。苺花は今まで通り、図書館でゆっくり勉強したらいいよ》
「翠くん……ありがとう」

 どこまでも優しい翠くんに気持ちが溢れて、今すぐ会いたくなる。