「あっそうだ翠くん、『龍乱會の総長は一人でJesusを潰した』なんて噂が立っちゃってたよ」

 潰したってことは、チームに喧嘩を売ったってこと。優しい翠くんがそんなことするはずない。きっと根も葉もない噂なんだろうな。

《あ……それは本当、かも……》
「え……!?」

 翠くんは言いにくそうに話しだす。

《先代の総長がJesusにバイク事故させられてひどいケガを負ったんだ。それが許せなくて……一人で乗り込んで、もう死んでもいいやってくらいの気持ちでがむしゃらに戦ってたらいつの間にか潰しちゃってて。ハハ》

 いつの間にかって、笑って言ってるけど、Jesusはお兄ちゃんたちも手を焼いていた凶悪なチーム。一晩で、しかも一人で潰すなんて信じられない話だ。
 でも、正義感の強い翠くんだから、先代の仇をとるためって理由に納得した。

《……軽蔑した?》

 翠くんの切ない声がした。

「軽蔑?」
《だますつもりはなかったけど、総長やってること知ったら苺花はどう思うだろうって……言えなかった。だましたも同然だ。ごめん》