きっかけは翠くんの二つ上の幼馴染み・禅路(ぜんじ)さんという人が龍乱會の先代の総長だったこと。
 勉強に集中したかった翠くんは元々暴走族に入るつもりはなかったけど、就職する関係ではやく引退することになった禅路(ぜんじ)さんに『お前しかいない』と指名されて仕方なく引き受けてしまったそうだ。

《ほんとは夏前までだったんだけど、延期させられちゃって断れなくて……》

 困ったように笑いながら言う翠くん。
 そういう断りきれないところ翠くんらしいなってほっこりして、つい笑ってしまう。

《ちょっと。なんでいま笑ったの?》
「フフッ。なんでもない」
《いや、絶対なんでもなくなかったよ》
「フフフッ」

 笑い過ぎって叱る口調もやっぱり優しくて、暖かい気持ちになる。