「なにすんだ柚生(ゆずき)!」

 いつの間にかそこにいたゆずくんを、涙目の明志くんが見上げる。
 脇腹を押さえる明志くんの様子から、ゆずくんが明志くんの脇腹をつついたみたいだ。
 あ、明志くんの弱点あった!

「いつまでも苺花独り占めしてるからだよー」

 舌を出したゆずくんは私の肩に手をまわしてもたれかかる。

「あ、明志さっき電話来てたよ。先代から」
「なに!?それを早く言え!」

 明志くんが大慌てでスマホを取りに行くと、ゆずくんは私と目を合わせてフフン、と笑った。
 あ。これはゆずくんがなにか企んでる時の顔。
 って思ったのも束の間、ゆずくんが私のこめかみにチュッとキスをした。

「ひゃっ!?ちょっと、ゆずくん……!」
「んー?」

 無邪気な笑顔で誤魔化されると、それ以上怒る気がなくなっちゃうのはいつものこと。
 ゆずくんは、明志くん以上に私に対する距離感がおかしい。
 ちっちゃい頃から苺花苺花〜って懐いてきてくれて嬉しかったけど、私たちももう中学生。
 さすがにこめかみとは言えキスされちゃうと焦る。

「ダメだよゆずくん、こういうことは恋人とするんだよ……!」
「なに言ってるの、僕は苺花のお兄ちゃんだよ。キスぐらい普通だよ」
「えっそうなの……?」

 知らなかった、兄妹ってこんなに距離感近いんだ……?