【藤堂】と立派な字体で書かれた表札を掲げる新築の一軒家。
 私は、お兄ちゃんたちと一緒に藤堂家の家の玄関を開けた。
 玄関の靴箱の上には、写真盾が置いてある。
 ウェディングドレスを着る私のお母さんと、タキシードを着る明志くんたちのお父さん、それからその二人を囲むお兄ちゃんたちと私。
 みんな笑顔の幸せな家族写真だ。
 その横にあるカレンダーを見て、お義父さんとお母さんが仕事でイタリアに行ってからもうすぐ一カ月か、なんて思う。

 元々、明志くんたちと私は幼馴染みだった。
 明志くんたちの実のお母さんはずっと前に家を出てしまって、私の実のお父さんは小さい頃に病気で亡くなった。
 悲しい時も嬉しい時も、いつも近くに明志くんたちがいた。
 色んな事を一緒に分かち合った、兄妹みたいな存在。
 だからお母さんがお義父さんと結婚するって聞いて、本当の兄妹になれるんだってすごく嬉しかった。
 それからお母さんたちが仕事で二年間イタリアに行くことになったのは二人が結婚してすぐのことだった。

『明志くんたちがいてくれたら安心だわ。苺花のことよろしくね』

 その言葉に明志くんは力強く頷いて、藤堂家の四人暮らしは始まった。
 力持ちな明志くんは買い物や力仕事担当、手先が器用な蒼依くんは料理担当、洋服にこだわりがあるゆずくんは洗濯担当で、私はお掃除担当。
 お互いができないときは助け合ったりして、日々楽しく暮らしている。