「そ、そっちこそ、夜道には気をつけてくださいね!!」

 翠くんが苦し紛れに言ったセリフに明志くんが青筋を立てる。

「夜道に襲撃しようってのか?上等だ!」

 龍乱會のメンバー達が総長に憧れの眼差しを向ける。

「おお……総長があんな啖呵切るとこ初めて見たぜ」「やっぱ翠さんかっけぇ!」

 龍乱會総長とERRORs幹部の妹の彼氏、という立場の狭間で揺れる翠くんの葛藤は、皆んなにわかるはずもなかった。

「帰るぞ苺花」
「あ、う、うん」

 そして私は、お兄ちゃんたちに連れられて龍乱會のアジトを後にする。
 最後振り返って見ると、まっすぐにこちらを見つめる翠くんと目が合った。

 ――大丈夫。

 小さく頷く翠くんの力強い目がそう言ってるように見えて、不安でいっぱいだったけど、私もそれにこたえるように小さく頷いた。