どうしよう、なんとか穏便にしたいけど……。
 出ていこうにもタイミングが分からないでいると、ピンと背筋の伸びた翠くんが扉を開けて出ていってしまった。

「あ、翠くん……!?」

 翠くんに続いて橙さんも出ていくと、その場の緊張がさらに高まる。

「よぉ、羽根村。相変わらず貧弱そうな見た目してんなぁ。ちゃんと食ってんのか?」

 明志くんが一歩前に出て嘲笑うような声で投げた。

「なんだとゴルァ!」

 橙さんがすごい剣幕で反論するのを、翠くんが静かに手を出して止める。
 少し悔しそうにしながらも橙さんが引き下がると、翠くんは落ち着いた足取りで明志くんたちの前に進み出る。
 そのあまりの落ち着きに、さすがの明志くんたちもグッと身構える。
 どこからか風が吹いて、翠くんのサラサラな髪と背中の大きな金の龍がはためいて、みんなが息をのんだ。