橙さんに続いて非常階段を降りて、一階に戻る。
 扉を少しだけあけて中をのぞくと、そこにいるだけでオーラがある、背の高い三人組が見える。
 私の、三つ子のお兄ちゃん。

 やばい、勢ぞろいしてる……

 仁王立ちする三人は、周りを臨戦態勢の龍乱會に囲まれてるっていうのに堂々としていて、まるで屈する様子がない。
 現時点で二十人はいる龍乱會相手に、三人なら余裕で勝てるって自信に満ちた佇まいだ。
 
「ねー、苺花さらったの誰ー?」

 ヒリついた空気をのんびりとした口調で破ったのは、三男の柚生(ゆずき)くん。 私はいつもゆずくんって呼んでる。
 ウェーブした金髪、黒色のネイルに、ゆるい笑顔。可愛いものに目がないゆずくんらしく、前髪の横にはうさぎのゆるキャラのピンをつけている。
 一見、害のなさそうな今どきの男の子。
 だけどその実態は……

「一発殴るだけじゃおさまんないんだけど」

 ERRORsきっての喧嘩好き。目が合ったらもう逃げられないと噂の特攻隊長だ。

 ゆずくん、笑ってるけど相当怒ってるみたい。
 いつも眠そうな優しい目が今は爛々として、蛇が獲物を探してる時みたいな目になってる。