「悪いな、苺花(いちか)ちゃん。ちょっと兄ちゃんのこと聞かせてもらいたいだけなんだわ」

 派手な髪色、派手なピアスに、着崩した制服。
 見るからに悪そうなその男の子は、大きな廃工場に巻き舌まじりの声を響かせた。
 広い空間なのに息苦しい感じがするのは、外からの光が少ないせいなのか、六月のじっとりとした空気のせいなのか、それとも十人ぐらいの怖い顔した不良さんたちに囲まれているせいなのか……。
 私はおとなしくロープで後ろ手を縛られながら愛想笑いするしかない。

「お兄ちゃんについて、ですか……?」

 私から話せることなんて特にないんだけどなぁ、とか思ってたら手首のロープをきつく締められて、痛みに顔が歪んだ。

「おい、お前締めすぎじゃねぇか?」
「仕方ねぇだろ、逃げられるわけにいかねぇんだから!」

 うぅ。縛ったりしなくてもこんな怖い不良さんたちに囲まれてたら逃げる気なんて起きないのに……。
 そう思いながらも、ここで文句なんか言ったら帰る時間が遅くなっちゃいそうなので、私は大人しく痛みにたえることにした。