「ここは……?」
「総長室。お客さんと話すときに使う部屋って感じかな。基本僕しか入らない部屋だから安心して」

 そう言って扉を閉めるや否や、翠くんは私を抱きしめた。

「!」
「もー……何やってんのこんなとこで……」

 耳元に聞こえる呆れてるようで愛のある声、宝物を触るみたいな優しいハグ。

「翠くん……っ」

 ドキドキするけど安心する温もりに、泣きそうになる。
 紛れもなく私の大好きな彼氏、翠くんだ。

「苺花、ほんとに藤堂三兄弟の妹なの?苗字、吉名じゃなかったっけ」
「あ、えっと、私のお母さんと明志くん達のお父さんが再婚したの。だから義理の兄妹」

 翠くんは納得したように、でも残念そうに「あー……」と声を漏らした。

「翠くんこそビックリしたよ。龍乱會の総長なんて」
「これには事情があって……あ、それより縄解こう。座って」

 翠くんは私をソファに座らせて、丁寧に手首の縄を解いてくれる。

「ていうかあいつらに何か嫌なこととか、触られたりとかしなかった?悪いやつらじゃないけど、苺花可愛いから心ぱ――」

 と、言ってる途中で縄がほどけて、赤くなった私の手首が露わになった。
 翠くんの目に、影が落ちた。

「……苺花。ちょっと用事ができた。すぐ戻る」

 すくっと立ち上がった翠くんの目が、スン、と据わった。