「僕の姫に触った時点で重罪だから。しかも強引に誘拐して縄で縛った?殺す。百回殺ー……」
「僕の姫?」

 橙さんの冷静なツッコミに翠くんがハッとして、動きを止めた。
 そこで私もハッとする。
 龍乱會の総長の姫が、敵対組織ERRORs幹部の姫って……やばいんじゃ?

 翠くんは「あー……」と天を仰ぐ。

「お、ボクノヒメって毒持った花さわったら重罪らしいよ?」

 その場にいるみんながキョトンとした。
 そんな名前の花は、多分ない。

「そうなんすね……?」
「と、とりあえず、奥の部屋でこの子に話聞いてこようかな。人払い頼んだよ、橙」
「うす」

 頭の上にはてなマークを浮かべる橙さんと、呆然とする新入りたちを残し、翠くんは私を立たせて奥の扉へと連れていく。
 扉を開けて非常階段を上がると、二階の廊下にはいくつか扉があって、翠くんは一番奥の重そうな扉をあけた。
 中は大きなガラステーブルと柔らかそうな革張りのソファに、大画面の液晶テレビが置いてある。