安護がホッと顔をほころばせた直後、

「バカなの?」

 翠くんは、容赦なく安護を殴り飛ばした。
 再び吹っ飛ばされた安護は理解が追い付かないようで、困惑した様子で翠くんを見上げている。

「わかんない?僕いますごく怒ってるんだよ。大事な彼女をさらったお前を殴り殺さないようにするので必死なんだよ」

 目に影を落とす翠くんはパキパキッと指を鳴らした。

「これ以上怒らせないで」

 怒りに震える声で言う翠くんに、安護の喉がヒュッと鳴った。

「約束して。今後一切ERRORsと龍乱會、藤堂苺花の前に姿を見せないこと」

 翠くんが目の前で仁王立ちして言うと、恐怖でもう声を出すこともできないらしい安護が首を何度も縦に振る。

「そ。じゃあ、十秒だけ待つよ」
「え……?」
「10、9、8」
「!?」

 翠くんが左腕で再び殴る準備をしながらカウントダウンを始めた。

「7、6、5……」
「うわぁぁああ!!」

 安護は顔を真っ青にして大慌てで立ち上がり、走り去っていく。