安護は涙目で手を伸ばしたけど、仲間だった人たちは振り返りもせず行ってしまう。

「残念。もし龍乱會とERRORsがなくなっても、安護くんには誰もついてこないんじゃない?」

 翠くんが安護の胸ぐらを掴んで立たせた。

「ま……待て、話をしよう、な」
「話す?もうお前と話すことなんてないよ」

 そのまま安護を壁に追い詰めて押し付ける。

「そ、そうだお前、あれだろ?行きたい高校があるんだろう!?俺の親父に口聞きしてもらってテストパスさせてやろう!受験勉強なんかせず彼女と思う存分デートできるぜ!?」

 ピタ、と翠くんが動きを止めた。
 そのとき、遠く後ろの方のドアからお兄ちゃんたちが駆け付けた。
 私と目が合ってすぐに乗り込もうとするゆずくんを、明志くんが止めるのが見える。
 それに気づかない安護は、なにも言わない翠くんに希望を見たのか、少し表情を明るくさせた。

「な?悪い話じゃねぇだろ!そうだ、俺たち友達になろう!龍乱會もなにかと入り用だろ?金ならいくらでも渡してやる!車の送迎もつけてやろう!あとはなんだ?何が欲しい!?」

 懸命に説得する安護に翠くんがニコッと笑った。