「あひゃひゃ!ERRORsの総長とも一戦交えてきた上に雨の中走ってきて、しかも右肩外れてんでしょ?最悪じゃん!」

 翠くんは、なにも言わずに高笑いする安護を睨みつけた。

「……へぇ、さすがだな。こんな状況で殴られたっつーのにいい目だなぁ」

 安護は翠くんの顎に手を添えて自分の方に向かせる。

「バカみてぇにまっすぐでキラキラしてて、先代の禅路にそっくりだ」

 その手から逃れて顔を背ける翠くんの顎を、もう一度掴んで強引に自分の方に向かせると、ニヤリと笑う。

「何回殴ったらその目が濁るのか、楽しみだな」

 そう言って翠くんの胸倉をつかみ、再び思い切り振りかぶった。
 翠くんがきたる衝撃に耐えようと目をギュッと閉じる。

「やめて!!卑怯者!!」

 思わず叫んだ私に、安護がピタッと動きを止めた。

「卑怯者……?」

 目の据わった安護がゆっくりと私に振り返る。