……――そう。 翠くんは、紛れもなく私の彼氏。


「……苺、花?」
「翠、くん……えっ」


 図書館で出会った、真面目で、爽やかな、私の最愛の彼氏。
 そんな彼氏が、暴走族のアジトのど真ん中で、特攻服を肩にかけて『総長』なんて呼ばれている。


「っ……」


 えーーーーーー!!!!
 かっこいい~~~~!!!!


「翠さん、どうしました?」

 私と目を合わせたまましばらくかたまっていた翠くんに、橙さんが声をかけた。

「……橙」

 翠くんがスッと立ち上がり私に背を向けた。

「やっぱ新入りのしつけ、僕がするよ」
「え? 総長が直々にっすか」
「うん」

 拳をバキバキッと鳴らして歩き出そうとする翠くんを、橙さんが引き留めた。

「待ってください、目がヤバイっす。殺し屋みたいになってます」
「うん。ちょっと殺してくる」
「そー……れはまずいっすねー……」

 新入りたちが「ひぃ!」と怯えてあとずさった。