僕は明志さんと蒼依さんの手を振りはらって向き直る。

「安護は用心深いやつなんです。僕が一人じゃないってわかったら、きっと苺花を連れてすぐに逃げ出す」
「いや、しかし……」
「苺花は無事に連れて帰ります。必ず」

 目を見てはっきりと言いきると、明志さんも蒼依さんも言葉をなくした。
 その隙を狙って踵を返す。

「待て!おい!!」

 明志さんが僕を追いかけようとするところに、橙が立ちはだかった。

「翠さんの意志を邪魔するなら、俺が相手します」
「お前な……」

 続けて龍乱會の他のメンバーも橙の横に並んだ。

「おいおい……もう俺たちが争う必要はないってわかっただろ……!?」
「はい。自分もそう思います。でも、翠さんの意志を邪魔する奴は全員敵とみなします!」

 龍乱會のメンバーがそろって戦闘態勢に入った。

「……そんなにあいつを信じてんのか」

 明志さんが驚きを隠せない様子で言った。

「はい。俺たちはみんな、翠さんについていくためにここに居るんで!」

 振り返って見えた龍乱會のみんなの頼もしい背中に、胸が熱くなった。
 ありがとう、みんな……!

 もう振り返らずに、前だけを見る。
 外に出て走り出してしばらく、どんよりとした曇り空から雨が降り出した。
 それも構わず全力で走る。

 ――苺花。
 お願いだ、無事でいてくれ……!