「待って!モモ!」

 この場に似つかわしくない女の子の声に、皆がピクッと手を止めた。
 見ると、派手な見た目の女の子が泣きそうな顔でこちらを見ていた。
 その後ろには蒼依さんがいる。
 蒼依さんが彼女を連れてきたのか?
 この抗争が始まろうとしてる現場に、わざわざ?どうして……

「ルリ!?だめだろこんなところに来たら!帰れ!」
「違うのモモ!その人じゃないの!」

 その子が叫んだセリフで、その場の空気が一気に変わるのを感じた。

「え……?」 
「私を襲ったの、その人じゃない!ここにはいない!」
「え……嘘だろ……じゃあルリを襲ったのって……」
「……」

 物々しい空気の中、ポケットの僕のスマホが着信を知らせた。
 嫌な予感がして、すぐに取り出して画面を見る。
 ……非通知だ。
 ごくりと息を吞む。
 皆の注目を一身に浴びながら、通話ボタンを押して耳にあてた。

《よぉ。久しぶり》