「うん。大丈夫、今行こうとしてたところだよ」
「……また無理してませんか」
「ハハ」
「ごまかさないでください」
「大丈夫。ちゃんとやるから」
「そういう問題じゃないっすよ!つーかまた今夜街に行くつもりじゃないっすよね?」
「んー……ハハッ」
「右肩外れてんすよね!?全治二週間なんすよね!?」
「ハハハハ」
「翠さん!」

 橙の小言を乾いた笑いで受け流しながら階段を降りていく。

「……そんなに苺花さんに会いたいんすか」
「うん」

 即答すると、橙がぐっと押し黙る。

「……ごめんね、橙」

 本当なら、いま龍乱會を脅かす存在であるERRORsの妹と恋愛関係にある男なんか、総長にしておきたくないはず。
 他のメンバーだってそうだ。
 危うい僕のわがままについてきてくれるみんなには感謝しかない。

「謝んなくていいっすよ。守ってくれるんですよね。龍乱會を」
「うん」

 僕は橙に振り向くことなく、力強く頷いた。

「絶対守るよ」

 苺花も、龍乱會も。

「……やっぱ翠さんには叶わないっすね」

 橙の呆れた声が聞こえた。