『女の特徴っすか?んー、なんかこう、フワッと、ほんわかした、ふにゃふにゃ笑うちっこいやつでした』

 苺花が来てくれた?門番を殴って、ジャケットを奪って?
 
「……ふ」

 そんなわけない。そんなこと藤堂三兄弟が黙ってないはずだし。
 そう思いながらも、その飴をポケットに大事にしまっている僕は矛盾しているだろうか。

 ……会いたい。
 今すぐ会いに行って苺花の笑顔が見たい。あわよくば抱きしめたい。
 ……でも、その前にやるべきことがある。

 自分に喝を入れてソファから起きあがったとき、部屋がノックされた。

「翠さん、大丈夫っすか」

 (だい)。ひどく心配そうな声。
 扉を開けると、橙の眉間にしわを寄せた険しい顔があった。
 橙は体こそデカいし表情筋の硬いわかりにくいやつだけど、その中身はかしこい大型犬みたいな可愛いやつ。