不意に、脱臼した右肩が痛んだ。
「……っ」
うざったい装具を肩につけて三日ほど。
大袈裟な装具は外れたけど、あと十日はこのベルト式のサポーターで肩を固定しておかないといけないらしい。
見上げた総長室の時計は、もう集会の時間を差していた。
僕はため息交じりに教科書を閉じて、鞄にしまう。
そこに置いてあったミネラルウォーターを喉に流し込んで、深呼吸して立ちあがった。
でも立ち眩みがして、ソファに崩れ落ちるようにして横たわった。
……情けない。休んでる暇なんかないのに。
横になった拍子に、胸ポケットに入れていた飴の袋が出てきた。
それをつまんで眺めてみる。
これは、先週門番をしていたやつからもらったもの。
『通りがかった女と喋ってたら、突然後ろから殴られて気失って……それで、起きたら龍乱のジャケットがなくなっててこの飴があったんです』
そう言った門番は二人とも柔道黒帯の大男で、こんな二人をいくら不意打ちとはいえ倒せる奴はそういない。
その後ジャケットは裏門近くで発見され、アジトに誰かが侵入して悪さをした形跡も特に見当たらなかった。
そんな気味の悪い侵入者が置いていったお菓子なんか恐ろしくて食べられないと捨てようとしていたので、じゃあ僕が貰うと申し出た。
その飴が、苺花がよく鞄に忍ばせていた抹茶のソフトキャンディと同じだったからだ。