夕方、十八時。
 僕は眼鏡をかけフードを目深にかぶり新合町の繁華街にいた。
 繁華街を歩く人の中、龍乱會のジャケットを着た二年のメンバーが談笑しながら前から歩いてきた。
 スッと横を通り過ぎたけど、総長の僕には気付かない。
 変装がうまくいってることを確認出来てホッとする。
 街には家路を急ぐ人がたくさんいて、商店街からは穏やかで平和な空気が漂っている。
 ふと見上げると、オレンジから深い青に変わろうとしている空に、飛行機が雲を吐き出していた。
 飛行機雲は分厚く、空に太い線を描いていく。
 ……きっと次に雨が降る時も苺花には会えないだろう。
 胸が苦しくなって、切り替えようと頭を横に振った。
 今やるべきことに集中する。
 なんでわざわざ変装なんかしているのかと言うと、いつも龍乱會が世話になってる街の人から『龍乱會のメンバーが悪さしている』と情報が入ったから。
 いきなり通行人を殴ったり、学生を捕まえて金を脅し取ったり、卑劣な行為の数々。
 情報によればほとんどの事件がこの新合町でこの時間帯に起こっていて、僕はその現場をおさえるべく、巡回を続けていた。
 そのメンバーは、なぜそんな悪さするのか。
 目的はきっと、龍乱會を陥れること。