安護(あご)は数日前から行方をくらましてるらしいです」
「そう……見つかったらすぐ教えて」
「わかりました。翠さんは今日も一人で行くんですか」
「うん」

 ……?
 行くって、どこに行くんだろう。

「自分も行きます」
「いいよ。橙は目立つから」
「でも……」
「僕を誰だと思ってるの?」
「そりゃあ翠さんが誰かにやられる心配はしてませんけど、最近そのせいであんまり勉強できてないですよね。寝れてますか?」
「……大丈夫だよ」
「翠さん、やっぱり、」
「大丈夫。橙は自分のすべきことをしてくれたらいいから」

 翠くん、どこに行くのか分からないけど、なにか調べものでもしてるのだろうか。
 疲れて見えるのはそのせいなのかな。顔色悪いし、目の下に隈もある。色々と無理してるのかもしれない。
 今度はさっきと違う意味で、翠くんの元へ飛んでいきたくなった。

 ……翠くんが頑張ってるのに、私は何をやってたんだろう。

「帰ろ、蒼依くん」
「もういいの?」
「……うん」

 私は立ち上がって、決意を胸に力強い足取りで歩き出した。

 私、翠くんに甘えてたんだ。
 待ってるだけじゃだめだ。
 全部解決させて、翠くんに会いに行く。
 私が、翠くんに会いに行く!