「黙って」

 翠くんのその一言で、ピタリと声が止んだ。

「それ以上言われたら、手が出そう」

 それは穏やかな声に聞こえたけど、静かな怒りがこもったセリフだった。
 誰も何も言えなくなる。

「苺花は僕の最愛の人だ。いくら龍乱會のメンバーでも、手出ししたらただじゃおかない」

 胸がギュッと苦しくなって、泣きそうになる。
 まさか私のいないところで翠くんがそんなこと言ってくれるなんて。
 翠くんのことが愛しくて仕方なくなる。
 今すぐ『私もだよ』って言いに行きたい。

「誰がなんと言おうと僕は苺花を信じてるし、絶対に守る。苺花を守るためなら命だって惜しくない。でも、それは龍乱會に対しても同じだよ」

 その言葉に、メンバーたちはハッと顔をあげた。

「先代から引き継いだのは『龍乱會』っていう名前だけじゃない。龍乱會の仲間もだ。僕は全部を守りたい」

 翠くんが立ち上がって、メンバーの視線が釘付けになる。

「言いたいことはわかる。でも信じて欲しい。僕は龍乱會を全身全霊で守りたいんだ。だから……」

 翠くんの凛とした目に、光が入った。

「四の五の言わず、ついてきて」

 そう言ってのけた翠くんに、鳥肌がたった。
 これが、龍乱會の最強総長、羽根村翠なんだ。