「それが悩みだったんだって」

「え、悩み?」

「子供の頃の夢はみんなを笑顔にするパン屋さんになることだっんだけど、家庭の事情で製菓学校には行けなくて。独学でパンを学んだけど、自分の店を持つって難しいじゃん?」

へぇ、そんなことまで知ってるんだ。
あっちゃんて呼ばれてたぐらいだもんね、仲良いんだね。

私なんかよりずっと。

「それで少しでも大好きなパンと関われるようにって購買のおばちゃんになったんだ。それでも夢を捨てきれなくて、こうしてたまにパンを焼いてきてくれるんだよ」

「そうなんだ…、でもちょっと違っちゃったかもしれないけど夢叶ってるね!中村くんが笑顔でパン食べてくれるもんね!」

「嘘だよ」

「えぇっ!?」

食い気味だった、私が言い終わるか終わらないかのところでバラされた。

このセリフを言われるのは2回目だ。

そんでもってまた笑ってる。


…私の反応はそんなにおもしろいの?

もう何の反応も見せられないんだけど。


「…あんなに仲良さそうだったから本当かと思った」

「仲は良いよ、おいしいパン屋見付けたら情報交換するぐらい」

おいしいパン屋見付けたら?何その関係性…