そのメモに書かれていた名前は。
 右側はメイナード、ブランドン、ウォーレン、エベレッド、ワイアット。
 全て先祖に居た名前だ。

 そして左側にはヘザー、ヴァイオラ、デイジー、アリッサ、アイビー、そしてウィロー。


「アイビーはともかく、女の子にウィロー?
 柳なんて、木の名前をアダムス子爵が許すはずがないのに?」


 今朝帰ってきた時、憔悴していた妹は。
 そう話しながら、今は可笑しそうに笑っていた。

 ミリーは風に靡く柳の木が好きだ。
 母が教えなかったのにリストに入っていたのは、ミリー本人がそれをスチュワートに話したのかもしれない。



「貴方と同じ緑色の瞳なら、ミドルネームに女の子らしい名前を入れればいいから、ウィローが第一候補ですねと彼は笑っていたわ。
 初めての子供だと、それはそれは楽しみに……」


 
 そこからは本格的に母と妹が泣き出したので、ジャーヴィスは何も言わなかった。
 彼の喉の辺りにも、熱い塊が込み上げてきたからだった。




 
 翌日、再びジャーヴィスの執務室にミルドレッドが現れて、仕事を手伝いたいと言ってきた。


「王都へ行く前に、お仕事を出来るだけ片付けて行きましょう」

「行きましょう?もしかして……」

「はい、わたしもご一緒します」