「現時点で身元がはっきりしているのは、スチュワートの実母のメラニー・コーネルだ。
 どこで彼女がローラ・フェルドンと繋がったのか、関係者に当たってくる」


 そう言いながら、ジャーヴィスは書棚から貴族名鑑を取り出して、ミルドレッドに手渡した。
 眠ってしまった妹をベッドへ移動させ、母と部屋の外で立ち話をした後、ここでずっと貴族名鑑を眺めて思案していた。


 レイウッドのアダムス家と、ウィンガムの我がマーチ家の頁には栞を挟んである。



「ミリーもこれに目を通しておきなさい。
 ウィンガムとアダムスの代々の人物名を眺めているだけでも、面白いと思うよ」


 ミルドレッドはアダムス家代々の名前なら、妊娠が分かった時に、スチュワートと話したことがある。
 バーナード、リチャード、スチュワート、レナード、カールトン……お馴染みの名前を彼はあげた。
 そのことをジャーヴィスは言っているのだろうか?



「お調べになると言うのは、ヴィス兄様がおひとりで?」

「いや、先程王都の知り合いに早馬を出した。
 ギャレット商会で調査部門を仕切っているイアン・ギャレットという男だ。
 私の襲名パーティーに来ていて、ミリーに挨拶していたが忘れた?」

「……申し訳ありません。
 全然思い当たらなくて」