久し振りに自分は空腹だと感じ厨房を覗いたら、キッチンメイドが彼女に気付いて足早にやって来た。

 ミルドレッドはお腹が空いているけれど、普通に夕食を家族で摂りたいので、軽くつまめる程度のものが欲しいこと、ここで食べたいことを伝えた。


 メイドが椅子を持って来てくれたので、ミルドレッドは彼女が作る様子を眺めていた。
 胡瓜のサンドイッチはミルドレッドの好物だ。
 メイドはそれを覚えていてくれたのだろう。
 普段会わない彼女の名前は知らなかったが、後で教えて貰おうと思った。


 手早く作る彼女を眺めていたら、自分は自分が食べたい好きなものさえ作れないのだとぼんやり考えた。
 レナードから馬鹿にされた嫁入り学校のマナースクールに通ったが、貴族女性に必要ないものは学んでこなかった。


 スチュワートが意外に甘党で、ミンスパイを好むことは知っているけれど、ミルドレッドに作れるはずはない。
 あのローラは、きっと彼女のように手早く料理を作れるのだろうと思った。


 ローラの年齢は聞かなかったけれど、ミルドレッドよりは年上に見えた。

 スチュワートがレナードのように、色気がある女性が好みならば、婚約前から付き合っていた可能性を示唆したサリーは正しいのかもしれない。