レナードは自分の後ろをついてきたサリーも、部屋に入ってきたことすら気付いていないのか、ミルドレッドの方に手を伸ばしてきたので、それを躱すと。
 彼女に逃げられた右手を、そのまま力が抜けたように下ろしたレナードだった。


「……ハモンドに聞いた。
 スチュワートを、女が尋ねてきたって。
 泊めるって、どうして?」

「まだ貴方は会っていないでしょう?
 ……そのひとはスチュワートに生き写しの娘を連れてきたの」


 レナードはそこまで説明されていなかったのか、本当に驚いた顔を見せたが、部屋の隅に立ったサリーがひっそりと笑ったのを、ミルドレッドは横目で確認していた。


「明日叔父様達がいらっしゃるから、貴方はその時に会った方が良いと思うわ」

「そんな、娘って……偽者だろ?
 兄上に限って、そんなこと有るわけ無い!
 これから直ぐに俺が追い出してやるから、待ってて……」

「騒いで大事にしないで。
 貴方は頭に血が上ると、怒らせた相手を容赦なく攻撃するでしょう?
 だけど、わたしを相手にした時のようには簡単にはいかないの。
 母親って子供を守る為なら、捨て身で向かってくる。
 ここを追い出して、有ること無いことを外で触れ回られたらどうするの?」