あの日から、レナードとは極力顔を合わせないようにしていたミルドレッドだ。
 食事も私室で摂るようにした。


 レナードは以前と変わらず、朝食はブレックファストルーム、夕食はダイニングルームで、ひとりで食べていた。
 自分を拒否されたショックでミルドレッドに暴言を吐き、自業自得で泥沼にはまってしまったレナードには、それが出来る精一杯だった。
 彼はミルドレッドが顔を出してくれることを祈りながら、気の進まない食事を続けていた。



 ミルドレッドは味気ない食事をしながら考える。
 レナードともう一度話し合うのなら。
 ケイトに尋ねて彼の朝夕の食事時間に合わせて、そこへ行けばいいのだと思うが、何を話せと言うのか。
 自分が最初に言葉を誤ったことを謝罪すれば、レナードも謝ってくれるのか。

 ……だが、それも今更だ。
 一度、口にしてしまった言葉は戻らない。


 レナードとは、このまま会話の無い夫婦になるのだろう。
 所詮、政略婚なんてこんなものなのだろう。
 政略相手のスチュワートと恋をして、結婚出来た自分は幸せ過ぎたのだ。


 こんな頭が空っぽのわたしに、彼は優しくしてくれた。
 分からないところを尋ねれば、丁寧に教えてくれた。
 その彼を甘ちゃんだとレナードは言ったのだ。