そして、ミルドレッドの『ウィンガム・マナーハウス』は王都のギャレット邸に、場所を変え。
『ギャレット・マナーハウス』と、その名を変えて。
 中等学校を卒業した平民の子女向けに、半年間の通学で生徒数8名のみで、毎年続けられた。




 イアンは想像する。


 結婚式でも、ふたりは少し距離を取っていた。
 周囲の視線を気にしていた。


 だが、今はもうヴィスは冷めた瞳をしていないだろう。
 学生の頃のように、自分に関係無くても、理不尽なことに対しては熱くなって。
『炎夏』は、どちらかと言えば、ヴィスに相応しかった。
 そんな彼を、あのひとは変わらぬ想いをこめた赤い瞳で見つめているのだろうか。


 しかし、あの頃とはふたりの距離は違う。
 ウィンガム領主の重責から外れ、彼は自由になった。

 

 実際に見たかったけれど、想像するだけでも心が沸き立つ。

 同じ方向を見ながら、ふたりが楽しそうに話して、連れ立っている姿が、イアンには見える気がして。



 お互いに誓った言葉通り、共に年齢を重ねた今も変わらずに、自分を幸せにしてくれる妻ミルドレッド・ギャレットをそっと抱き寄せた。


 

    おわり