「では、わたしと結婚してくださいますか?
 夫婦とは、どちらかが一方的に助けたり、幸せにする関係ではないと、今は思います。
 わたしは貴方を幸せにすると誓います」

「喜んでお受け致します!
 俺も貴女を幸せにすると誓います!」
 


 これでは、どちらがプロポーズしたのかわからない。

 そんなイアンとミルドレッドの始まりだった。



 ふたりが並んで歩く、ウィンガムの川辺の散歩道で。

 
 スチュワートも愛したミルドレッドの瞳と同じ色をした柳が。

 優しく吹き抜ける春の風に、揺れていた。

 


     ◇◇◇



 翌年にウィンガムの教会で行われたふたりの結婚式当日は、秋晴れだった。

 エリン・マッカートニー特製のウェディングドレスを身に付け、輝くばかりに美しいミルドレッドの腕は、あの長手袋に包まれていた。
 贈られてから一度も使用することのなかったそれを、ウェディングのサムシングフォーの『何か借りた物』として提案したのは、新郎のイアンだった。


 前夫スチュワートには勝てない、といつも思っていた彼は、こうしてミルドレッドと結ばれても、彼に勝ったとは奢らず。
 彼女の彼への想いも過去も、全て丸ごとミルドレッドを受け入れた。