当主のジャーヴィスは賢明なので、母には異議を唱えない。
 ご令嬢達なら勝手に持ち込んだ酒に酔う等、邸で問題を起こすこともないと思われる。

 最初は妹の仕事に対しては難しい顔を見せていたが、誰かの邸に通うくらいなら、自宅で開催した方が安全だと、イアンの案を支持する立場を取った。



「いいじゃないの、そうなさいな。
 この邸内でなら、貴女が働いているところをメルに見せられるでしょう。
 試して上手くいかないようなら、7月の1回でおしまい。
 来年から始めるわよ」


 先代伯爵夫人が決定を下す。
 勿論宿泊させるのだから、身元確かな家門に限る。
 調査なら得意分野のイアンが請け負った。


 王都からウィンガムへの送迎は、ギャレット商会が若い女性が好みそうな可憐、かつ上品な仕立ての馬車を2台走らせ、腕に覚えのある見た目の良い護衛も4名付ければ、どんな言い値でも通る気がする。
 




 そうして翌年から始まったミルドレッドのマナー教室は。
 その後何年も、続けられ。


 夏限定の『ウィンガム・マナーハウス』と呼ばれるようになったが、授業科目にいつまで経っても料理が加わることは無かった。