夏の舞踏会途中でエリンの側を離れ、イアンはジャーヴィスと合流した。


「着々と、うまくやっているみたいじゃないか」

「まぁ、私と致しましては、今のところは順調ではないかと思っておりますけれど」

「……お前、おりますけれど、って……笑わせる……」

「……言いたかないけど、あのひと怖いんだよ」




 笑うジャーヴィスを、恨みがましい目付きでイアンが睨んだ。


「今年は聖誕祭、レディマッカートニーも招待した。
 念願の彼女が食事をしている姿が見られそうだ」

「そうか……」


 既にイアンは、その姿を見ている。
 晩餐会の為の食事マナーを教え込まれながらのランチは、何の味もしなかった。

 今年もマーチ家の聖誕祭に招待して貰えるのは嬉しいが、エリンが一緒だと、王都に戻ってきてから、あらゆる項目で駄目出しされるのは目に見えていた。



 我知らず、少し声が小さくなるイアンに、またもやジャーヴィスが笑う。


「ウィンガムではミリーが料理を猛練習していて、俺達は食べさせられ続けている」

「……それは、もしかして」

「皆の好物を作るつもりらしいんだが。
 言った本人は責任を取って、それだけはどんな出来だろうと絶対に残すことは許されない。
 俺はあらゆる固さの茹で玉子を、いくつ食べたか覚えていない。
 母上は林檎と聞くだけで、顔が青ざめる。
 メルだけが元気に、良く分からないミルク粥を毎朝食べている。
 いつかお前の順番が来たら、覚悟はしておいた方が……」