「えぇ、他の人とは一緒に学びたくないお嬢さんも、外に出したくない親御さんもいらっしゃると思うんです。
 王都ではどうかは分からないのですけれど、この辺りの女性向け家庭教師は、外国語だったり、刺繍だったり、それぞれ専門の教師が多くて。
 何人もの家庭教師は費用もかかりますでしょう?
 ですから、そこまで特化していないけれども、基本的な物を全て教える家庭教師が居てもいいのではないかと……
 どうお考えになりますか?
 需要はあるでしょうか?」

「ありますと、簡単にはお答え出来ません。
 それこそ調査した上で、お答えするべきことだと思います。
 一番肝心なのは、貴女の修得されているそれらが、どれ程のレベルに達しているか、ですね。
 失礼ですが、確認させていただくことになります。
 ですが、生活に困っているわけでもない貴女が、どうしてお仕事をなさろうと?」


 イアンは誤魔化したのではなく、本当に調べてから答えようと思っている。
 その結果、残念ながら需要はなく、また彼女が人に教える迄に達していないレベルなら、家庭教師の話はそこで止まる。

 だが、辛い現実をミルドレッドに突きつけようとも、彼女はまた別の仕事を探そうとするだろう。
 そのあきらめない熱意が、どこから来るのか知りたかった。



「このまま安穏と兄の世話になるのではなく。
 仕事をして、その対価を得る姿を、メルに見せたくて。
 ウィラード様が選択された生き方を、忘れたくないのです」