逃げ足の早いマリーは、自分の身ひとつなら簡単にレイウッド領外へ逃げ出せるだろうと踏んでいる。
 ウィンガム以外なら、何処へ行っても構わないと告げていた。


 どうせ、レナードは初夜の床には現れない。
 その後も、マリーを抱くことはない。
 今では、アダムス子爵となったカールトンの指導の下、心を入れ換えて勉強に勤しんでいると聞いているからだ。
 

 マリーの出奔は朝まで発覚しないだろうし、アダムスはミルドレッドの時のように、ウィンガムに早馬を走らせることもない。




 夏になる頃。
 マリー・アダムスの病死が発表されて、レナードは領内の一族の娘と再婚すると聞いた。

 さすがに婚礼直後に死んだことには出来なくて、夏まで公にすることを控えていたのだろう。
 たった3ヶ月間の当主夫人の葬儀は、領民の参列も許されず、立ち会いは一族だけでひっそりと行われた。
 ウィンガム領主のジャーヴィスは義妹が病死しても変わらずに、レイウッドとの協力体制を続けていくことに合意していた。




 季節が秋になり、レナードの再婚の話を聞いて。

 将来はその血が少しでも薄まれば良いなと、妹に話すジャーヴィスだが。
 

 本当のところは、どうでもよくて、あまり興味はない。