そう言いながらレナードは、ミルドレッドの腕を掴んだ。
 彼が既にリチャードと共に、シールズ査察官に会っている等思いもしなかった。
 今朝だって彼はいつもと同じだった……

 


「ミリー、立ち話じゃなくて、座って話さないか?」

「ま、待って、レナード様は……」


 このままふたりきりで、話し続けたくはないのに。
 男性に強く腕を掴まれたのだ。
 完全に体力も回復していないミルドレッドは、そのまま引き摺られるようにソファに座らされたが、さすがにレナードも隣には座らずに、彼ははす向かいの1人用の肘掛け椅子に腰をおろした。


「君との再婚の話は、兄上の葬儀の直後に叔父上から打診された。
 叔父上とも相談して、直ぐには受け入れられないことだろうし、倒れてしまった君の体力が回復するまでは耳に入れるつもりはなかったんだ。
 まったく……査察官殿の奥方は勝手なことをしてくれたよ。
 夫婦揃って口が軽いのは、中央へ苦情を訴えてもいいな」


 スチュワートの葬儀の直後?
 では、わたしだけが知らなかったの?
 ……多分、家令のハモンドは知っていただろう。
 ケイトは?ユリアナは?


「その話を聞かされて、君はどう思った?」

「貴方も知らないと思っていたわ!
 ふたりで、この話はなかったことに出来ないかと相談して、シールズ様にお願いに伺おうとしていたの!
 ね、レナード様だって、お嫌でしょう?
 サリー様がいらっしゃるのに……」