毎朝、時間を合わせていたのかもしれない。
 確かに離れて座る会長と留学生の姿には、何者も近付けない何かがあって。
 
 同様に感じた誰かが、くだらない噂を流したのだろう。
 それは嫉妬なのかもと、イアンは思った。


 
 会長に賛同して、生徒会を中心に『自治権を我等に』運動が、他の生徒達にも広まって来た頃。

 いつも彼は、取り巻き達とこちらを見ていた。


「あのー、あれ。
 入りたいんじゃないですか」

 イアンは、会長に聞いてみた。


「あの留学生。
 例の炎夏の……いつも、こっち見てるから、参加したいんじゃないかなー、って……」



 声がどんどん小さくなっていた。
 言ってしまったものは、どうしようもないから仕方ない。
 自分を見る会長の目が怖い。


 どうしてこんなこと、言ってしまったかな。
 俺は、調子に乗っていたのかもしれない。



「……駄目だ、あいつは国費で留学している身だ。
 留学先で問題を起こせば、強制終了になる」


 それで、会長との会話も強制終了した。



     ◇◇◇



 ウィンガムに戻る馬車は2台。
 もう1台には、ミルドレッドとユリアナが乗っている。

 こちらの馬車には、ジャーヴィスとイアン、そしてメラニーだ。