個室に夫以外の男性とふたりきりで居たこと等、今まで一度もない。

 今回、レナードが寝室で臥せっているミルドレッドを見舞ってくれた時には、いつも侍女長のケイトを伴っていた。


 彼に会いたいと、ユリアナを通して言伝てたのは自分だが、私室に招いたつもりはない。
 1階のファミリールームで。
 勿論ふたりだけではなく、ハモンドかケイトに付いて貰って。
 当然そのように想定していた。



「……取り敢えず、下で話を聞いて貰えたら」

「わざわざ1階に下りなくちゃだめなのかな?
 ここでは出来ない話?
 急いでいるようだから、来た方が早いと思ったんだけど?」


 レナードの態度は自然に見えた。
 自分が意識し過ぎているのかもしれないが、それでも。

 

「確かに急いだ方がいい話なの。
 でも、ここじゃない方がいいから、部屋を移りましょう」


 ミルドレットがソファから立ち上がり、部屋を出ようとするのに、扉近くに居るレナードは開けてくれない。


「外出はどうだったか尋ねたら……公園で、シールズ夫人に会ったとユリアナから聞いた。
 その話をしたいんなら、ここの方がいいんじゃない?」


 立ち竦むミルドレッドに、レナードはいつもの義弟とは違う笑いを見せた。



「その話って……どんな話なのか、貴方もご存じなの?」

「……先週、叔父上とふたりで、シールズ査察官に会って来たからね」