「調べましたところ、バークレー嬢は先月20歳になっています。
 お父様よりは、ご本人の意思を優先して貰える年齢になりました」


 そこまで調べての、この解雇か。
 さすがはヴィスの妹だと、イアンはミルドレッドに惚れ直した。


 解雇された契約書を受け取ったユリアナも「これは後から、父に届けて貰いましょう」と、テーブルの上に置いた。
 この時、皆が初めてユリアナの心からの笑顔を見た。


「奥様、ウィンガムでお雇いいただけるのなら、どうぞよろしくお願い致します」

「えぇ、こちらこそ、これからもよろしくお願い致します。
 メラニーちゃんは兄様に預けて、貴女はご自分の荷物を」


 女性ふたりで、話を進めていく様子にジャーヴィスも苦笑いをしていたが、ミルドレッドから指名されたので、ユリアナの前に跪き、優しくメラニーを揺り起こした。


 ここでも視線を合わさないふたりに。
 ミルドレッドの前では、協力者であったことは一生隠し続けるんだろうなと、イアンは思う。



「ね、ほら、起きられる?
 おじちゃんと一緒に、違うお家に行かない?」

「……アナも……いっしょ?」

「……ユリアナ嬢も一緒だよ。
 もうすぐメラニーの誕生日だろ?
 皆でお祝いしたいんだ。
 メラニーを、抱っこさせて?
 おじちゃんのことが嫌じゃなければ、だけどね?」