「マリー・マーチは善意の第三者なんかじゃない。
 確かに何度も、兄上から援助されているから、それを続けろとミルドレッドを脅していたんだ。
 それを証言出来る人間だって居る!
 この女は詐欺師なんだ、こんな縁組は認められないからな」


 口論だけなら、誰かに負けたことはない。
 こんな男に負けるわけにはいかない……彼女の前で。


「あー、証言者ですか……誰です?」

「うちの家令だ!
 ハモンドが、ミルドレッドに付き添って、あの女が何を言ったのか、俺は後から詳しく聞いて……」

「アダムスに忠実な、一族出身の使用人の証言を、王家が取り上げるとでも?」

「じゃ、じゃあ、ミルドレッド!
 君もあの時、俺にそう説明して……」


 意外に手強いイアンではなく、今度はミルドレッドに矛先を向けたレナードだった。
 だが、その彼女からは期待していた言葉が引き出せるはずもなかった。


「そんな援助をマリーお義姉様から求められた、なんて説明はしていません。
 わたくしがレナード様に言ったのは3つだけです。
 1つめが、女性が連れていた娘さんが旦那様に生き写しだと言うこと。
 2つめが、子爵様達と明日会えばいいのではないか。
 3つめが、騒いで大事にしないでと、言うこと。
 これこそ、アダムスとは無縁のサリー・グレイ嬢が証言者です。
 ……レナード様も、ご存じでしょう?
 わたくしの頭は空っぽなのですもの、自分が話した内容くらい……
 全て頭の中に収まる容量は、まだまだ残っております」