各々の前には、ミルドレッドが命じたのか、新しいお茶が置かれていた。
 自分が居ない間に明かされた離婚の理由が、結構なものだったのか。
 それを聞いて萎れているのは、アダムスの3人で。


 出ていく前と変わらずに背筋を伸ばして座って、カップを手にしているのは、ミルドレッドとイアンと、眠ってしまったメラニーを抱くユリアナだけだった。



 イアンの横に座っていたマリーが、再びジャーヴィスの隣にやってきた。
 彼には、どうしてこの女がこんなに自分に懐くのか、分からない。
 何枚もの書類にサインをさせた時も、脅した覚えこそあれ、優しく等していない。
 今日だって、言葉のひとつもかけてはいない。 
 それなのに、どうしてだ?


『冷たい顔してみせるけれど、本当は優しい男』が好きなタイプと言う、ややこしい女性が存在することを、決してその男性像に該当しない彼は知らない。
 


 そんなジャーヴィスの目から見ても、アダムスの3人の変化は激しい。
 特にリチャードは、先程までの空威張りがすっかり消えて、ただの疲れた中年男になっていた。
 この分では、子爵家は直ぐに代替わりになりそうだと見える。