お前の調査等、何だ。
 大層に言うが、たったこれだけの話だ。
 あのウィンガムの若造も、戻ってこない。
 もう話は打ち切って、私は帰る。


 リチャードはイアンに、そう宣言して。
 帰宅して心を落ち着かせようと思っていたのに。
 記憶から消したいグロリアを思い出させた、この忌々しい男は。
 理由を聞かせてやった私を無視して、あの役立たずな侍女に話し掛けている。



「バークレー嬢、貴女は何かお聞きになっていませんか?
 グロリア様は貴女にとっても、ご先祖に当たる」

「……奥様がご命じになるのでしたら、ご説明致します」

「おい! 離縁の理由は、今私が話してやった!」


 リチャードが声をあげても、レナードさえもが、彼を見なくなっていた。



 イアンの質問に、ユリアナは答えながら思っていた。
 さっきまで、あの夜がミルドレッド様の『いざ』だと思っていたけれど、本当はこれからが『いざ』の時なのかも、と。




「いいわユリアナ、説明してちょうだい。
 わたくしも是非、本当の話を知りたいの」

「駄目だユリアナ!
 お前はアダムスの人間だろうが!」


 ミルドレッドの声を掻き消すように、リチャードはまた大声をあげ、立ち上がりかけたが隣のカールトンに阻まれた。
 今では彼も、真実が知りたいのだ。