それでも、ジャーヴィスと何処の馬の骨とも知れない男に、この場を仕切られるのには我慢がならなかった。


 ここまで来ても、リチャードが気にするのは男性ふたりで。
 小娘のミルドレッドのこと等、こいつらが帰ったら好きに出来ると考えていた。


 王命が出たという『あの女』との結婚も、明日にでもシールズに面会を捩じ込んで、こんなあり得ない養子縁組は認めないと、大声で文句を言えば、どうにかなるはずだ。
 この由緒正しいアダムスの新当主に、あんな元平民を嫁がせるわけにはいかない。



 その新当主レナードも最初の驚愕から時間が経過すると、心配は『ウィラードとは誰なのか』から『王命でマリーと結婚しなくてはならないこと』に移っていた。
 

「王家も俺も、ウィンガムなら誰でもいい」と、ミルドレッドに投げつけたのは確かに自分だったが。
 まさかあのローラを、ジャーヴィスがマーチ家の養女にするとは想像もしていなかった。


 昨夜だってローラを抱いていたのに、あの女は何も言わなかった。
 一体、いつジャーヴィスと連絡を取っていたのか。
 レナードは苛々と親指の爪を噛んだ。
 母ジュリアから注意されていた子供の頃からの悪癖だが、今も感情が落ち着かなくなると出てしまう。