兄の前妻のメラニーが気に入らなくて、出来損ないを産んだと精神的に追い込み……その結果、やらかした嫁に出来損ないを押し付けて、慰謝料無しで離縁させた。
 冷たい女だと陰口はあったが、後妻のジュリアとは上手くやっていた。
 


 このやり方は間違っていない。
 疎まれても、声をあげて一族の舵取りをする人間は必要だからだ。
 リチャードには、彼なりの信念があった。


 ところが、今までなら。
 彼が少し大きな声を出せば、怯えていたミルドレッドが普通に答える。


「こちらの方はわたくしの協力者で、旦那様の汚名を晴らすお手伝いをしてくださったアダムス家の功労者です」

「……スチュワートの汚名?
 アダムスの功労者とは何だ!」


 しつこく声を張り上げるリチャードの問いに答えたのは、ジャーヴィスだった。



「彼はギャレットと言い、私の相談役なんです。
 今回は、彼が色々と調べてくれまして、レイウッド伯爵の名誉は挽回出来ます。
 あぁ、アダムス子爵の異論は認めません。
 レナード卿への譲位はまだ完了していないはずだ。
 だとしたら、この家で一番上位は当主の未亡人であるミルドレッドです。
 彼の同席は、彼女の許しを得ています。
 ……それともうひとりの私の義妹も、この場に呼んでいただきたいですね」