リチャードはカールトンを伴って、やって来た。
 と言うか、カールトンから付き添いを申し出た。 

 父がいつものようにミルドレッドに、うるさく説教するのを阻止しようと思ってだ。
 それは……ミルドレッドを気遣って、ではない。
 兄のジャーヴィス・マーチも来ると、聞いたからだ。


 カールトンも、貴族高等学院の卒業生だ。
 3学年上の『厳冬のヴィス』は知っている。
 彼と彼の生徒会が学院側の意識を変え、生徒側は自治権を手に入れた。

 いつまでも現役気分で周囲に不快感しか撒き散らさない分家の父親が、本家の当主夫人である妹をどう扱っているか。
 いつも彼女を庇っていたスチュワートは、もう居ない。
 ミルドレッドから話には聞いていても、ジャーヴィスにその場を実際に目撃されるのが怖かった。


 それに加えて、『会長の懐刀』だったイアン・ギャレットも来たのはどうしてなのか、カールトンには理解出来なかった。

 彼はジャーヴィスの学年が卒業してから、しばらくして中途退学した。
 一代男爵の祖父が死んでしまって、在学資格が無くなったからだとも、何処かへ留学したからだとも噂はあったが直ぐに消えて、皆彼のことは忘れた。