「マリーって女、のこのこ出てくるかな?
 ローラ宛の手紙なんて普通は罠だと用心して、出てこないだろ?」


 イアンのその問いに、ジャーヴィスは自信たっぷりに答えた。


「来るさ、絶対に。
 レディマッカートニーが教えてくれただろう?
 マリー・ギルモアは、深く考えられない女だ。
 今、あの女はローラじゃないとばれるのを恐れていて、少しでもそんな証拠があれば、握り潰したい。
 エリンがウィラードから何を預かっていたのか、自分で確かめずには居られない。
 あの女が初対面の俺達に、マリーかローラか、どちらを名乗るのか、今夜の酒を賭けようか?」

「無事に祝杯をあげられるなら、俺が支払ってもいい」



 その言葉の通り、先に選ばせて貰ったが、敢えてイアンは負けに賭けた。
 今日はミルドレッドが居ないので、ジャーヴィスに対するイアンの言葉遣いは緩い。

 レイウッドに領主夫人を連れて行くわけにはいかないと、ジャーヴィスがいつもよりも厳しい顔で告げると彼女は納得してくれた。
「絶対に、メラニーちゃんの様子を確認してください」の言葉と共に。



 ジャーヴィスは、このレイウッド領内で一番人気のレストランを1日貸し切りにした。
 1日中と言っても、王都のレストランとは訳が違う。
 レストランのオーナーが思いきって吹っ掛けてきたであろう金額に色を付けて、絶対に内密にするように誓わせた。